プラスチックの研究から始まり、コンサルタントとして独立し、現在は起業家支援に携わる秋元さん。その多彩なキャリアは、変化の激しい現代社会を生きる若者たちに貴重な示唆を与えてくれます。51歳での大胆な転身、試行錯誤を重ねたフリーランス時代、そして自身の経験を活かした起業家支援へと続く秋元さんの軌跡は、「好きなことで飯を食う」という理想の実現に向けた挑戦の連続でした。その経験から、私たちは何を学べるのでしょうか。
大企業からの独立:51歳での大胆な決断
秋元さんのキャリアは、大手化学会社でのプラスチック研究から始まりました。営業やマーケティングも経験し、多様なスキルを身につけていきました。しかし、51歳という年齢で、彼は大きな決断をします。それは、会社を辞めてプラスチックのコンサルタントとして独立するという選択でした。
「51歳という年齢で独立することに対しては、周りの人はけっこう否定的でした」と秋元さんは振り返ります。「99%の人は成功しないからやめた方がいいと言われました。」しかし、彼の心の中には、以前から独立への思いがありました。学会で出会った大先輩のコンサルタントの姿に憧れ、「自分もああなれるかな」と考えていたのです。
この決断には、リスクも伴いました。家族の反応も複雑でした。「妻も何が起こっているのかよく理解できていなかったかもしれません」と秋元さんは言います。しかし、彼の中には「やりたい」という強い気持ちがありました。「今の自分が見たら、ずいぶん思い切ったことをしたなと思います」と振り返りながらも、その決断を後悔していない様子が伝わってきます。
起業家としての挑戦:ニッチ市場の開拓と自己ブランディング
独立後、秋元さんはプラスチックのコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせました。しかし、その道は決して順風満帆ではありませんでした。「プラスチックの分野も結構競争が激しくて、人数が多いんです」と秋元さんは当時を振り返ります。
そこで彼が取った戦略は、非常にニッチな分野に特化することでした。「プラスチックの中ですごくニッチなところ、自分の経験の中で人がいないところを見つけました」と秋元さんは説明します。この戦略は功を奏し、徐々に仕事が増えていきました。
同時に、秋元さんは自己ブランディングにも力を入れました。「プラスチック博士」というキャッチフレーズを使い始めたのもこの頃です。「最初からプラスチック博士って言ってたわけではないんです。だんだん自分のカバーできる範囲も広がってきて、そろそろプラスチック全般の専門家って言ってもいいかなと思えるようになりました」と彼は説明します。
この自己ブランディングの過程で、秋元さんは情報発信の重要性に気づきました。「自分の専門性を知ってもらわないと、仕事は来ない」という認識のもと、積極的に情報を発信し続けました。これが後のビジネスの拡大につながっていきます。
起業家支援への転身:経験を活かした新たなチャレンジ
フリーランスとしての経験を積む中で、秋元さんは新たな可能性に気づきます。それは、自身の経験を活かして他の起業家を支援するという道でした。
「起業創業の支援をずっとやっている方から学び始めました」と秋元さんは説明します。そして、その学びを活かして「起業支援プロフェッショナル協会」の設立に携わりました。この協会を通じて、起業や創業に関するセミナーを開催するなど、積極的に起業家支援の活動を展開しています。
秋元さんが特に強調するのは、「スキメシ(※)」という考え方です。「好きなことで飯を食う」という意味のこの言葉は、彼の起業家支援の理念を表しています。「究極の生き方はそこだな」と秋元さんは語ります。
※:スキメシは起業支援プロフェッショナル協会の許可を得て使用しています
若者へのメッセージ:人生の主導権を握るために
秋元さんの経験は、若い世代に多くの示唆を与えてくれます。彼が特に強調するのは、「人生の主導権を自分が取る」ということの重要性です。
「マストで生きるのは楽しくない」と秋元さんは言います。「責任感はすごく大事なことではあるんだけど、責任感が動機で仕事を進めるのもどうなのかな。やっぱり面白い、楽しい、そういったことで自分の人生を回していく」ことの大切さを説きます。
同時に、秋元さんは現在の経験を大切にすることも勧めています。「今の経験が自分の人生の主導権を自分の方に持ってくるために役立つ経験だと思ってくれれば、どんなことでも耐えられる」と彼は言います。
さらに、失敗を恐れないことの大切さも強調します。「会社を1回たたんで、さっさと次のスタートができるように」というメンタリティが大切だと秋元さんは考えています。失敗をステップとして捉え、そこから学び、次のチャレンジにつなげていく姿勢が重要だというのです。
秋元さんの経験は、キャリアは直線的である必要はなく、むしろさまざまな経験を積み重ねることで、自分だけの独自の道を切り開けることを示しています。彼の言葉を借りれば、「好きなことで飯を食う」という理想に向かって、常に学び、挑戦し続けることが、充実したキャリアと人生につながるのかもしれません。
文・師田賢人