デザインの世界を駆け抜ける:ベテランデザイナー嶋さんの創造的なキャリア

グラフィックデザインの世界は、技術の進歩と社会の変化に伴い、常に進化を続けています。そんな中で、長年にわたりこの分野で活躍してきたベテランデザイナーの嶋さんに、その経験と洞察について伺う機会を得ました。本記事では、嶋さんのキャリアを通じて、デザイン業界の変遷と、クリエイティブな仕事に携わる喜びや挑戦について探ります。

デザインとの出会い:「続かない子」が見つけた情熱

「私ね、昔から何をやってもすぐ飽きちゃう子だったんです」と嶋さんは笑顔で話し始めました。しかし、そんな彼女が唯一長続きしたのが美術だったといいます。この興味が、後の職業選択に大きな影響を与えることになります。

高校時代、嶋さんは女子美術大学付属高等学校に進学しました。ここで彼女は初めて本格的にデザインの世界に触れることになります。「美術っていうのは好きだったけど、デザインってこんなに奥が深いものなんだって、高校で初めて気づいたんです」と嶋さんは当時を振り返ります。

短大への進学の際、嶋さんはグラフィックデザイン専攻を選びました。「親が『グラフィックデザインが基本だから』って言うので、その道を選んだんです」と話す嶋さん。しかし、この選択が後々彼女のキャリアを形作る重要な一歩となりました。

短大での生活は、嶋さんにとって挑戦の連続でした。「周りはみんな上手で、自分はついていけるのかなって不安だったんです」と嶋さんは当時の心境を語ります。しかし、その不安は彼女をさらなる学びへと駆り立てました。短大卒業後、嶋さんは専攻科に進み、コーポレート・アイデンティティ(CI)の専門知識を深めました。

「CIの勉強をして、デザインって単に絵を描くことじゃないんだって気づきました。企業の価値観や目指すものを視覚化する、そんな奥深い仕事なんだって」と嶋さんは目を輝かせます。

ブランディングの魔法:デザイナーとしての成長

短大を卒業した嶋さんの職歴は、まさにジェットコースターのような展開を見せます。最初の研修先では、思わぬ理由で初日に退職。「今思えば若気の至りですね」と嶋さんは苦笑いします。

その後、嶋さんは大手広告代理店の子会社であるデザイン事務所に2年ほど勤務しました。ここでの経験は、彼女のキャリアに大きな影響を与えました。「銀座の不二家ビルのデザインとか、JALのカレンダーコンペに参加したり⋯⋯本当に刺激的な日々でした」と嶋さんは当時を懐かしそうに語ります。

「大きな仕事を任されるのは嬉しかったけど、同時にプレッシャーも大きかったですね。でも、自分の作ったデザインが街に出て、多くの人の目に触れるっていうのは、なんとも言えない喜びでした」

そして、嶋さんのキャリアに大きな転機が訪れます。横浜ゴムへの転職です。ここで彼女は、ブランディングとロゴデザインの世界にどっぷりと浸かることになりました。

「ロゴって、会社の顔みたいなものなんです」と熱く語る嶋さん。「ブランディングとロゴは切っても切れない関係なんですよ。会社の魂をカタチにするような、そんな仕事です」

嶋さんによれば、デザイナーの仕事は多くの人が想像するよりもずっと社交的だといいます。「多くの人は、デザイナーって一人で黙々と作業してると思ってるみたいですけど、実はそうじゃないんです。お客さんとのコミュニケーションがすごく大切。人と話すのが好きじゃないと、この仕事は難しいかも」

この経験を通じて、嶋さんはデザインの本質についての理解を深めていきました。「デザインって、単に見た目をきれいにすることじゃないんです。クライアントの思いや、企業の価値観をカタチにする。そして、それを通じて人々の心に何かを伝える。そんな奥深い仕事なんです」

挑戦と未来:フリーランスの道とAI時代のデザイン

キャリアを重ねた嶋さんは、ついに独立を決意します。しかし、フリーランスの道は想像以上に険しいものでした。

「デザインだけじゃダメだって気づいたんです。営業とか集客のスキルも必要で⋯⋯今でも四苦八苦してます」と正直に打ち明けてくれました。「でも、自分の判断で仕事を選べるっていうのは、本当に自由で楽しいんです」

最近話題のAIデザインについても、嶋さんの見解は興味深いものでした。

「AIにはできない”人間らしさ”があるんです。目の錯覚を使ったデザインとか、感覚的な調整とか⋯⋯そういうのは人間にしかできないんですよ」と嶋さんは主張します。

しかし、AIを敵視しているわけではありません。「AIの力も上手く使えば、もっと面白いものが作れるかもしれません。例えば、アイデアの発想を助けてくれたり、単純な作業を効率化してくれたり。人間の創造性とAIの効率性、その両方を活かせたら素晴らしいですよね」

嶋さんは、デザイン業界の未来について独自の見方をしています。「技術は進化しても、人の心を動かすのは結局人間なんです。だから、これからのデザイナーには、テクノロジーを使いこなす力と、人の心を理解する力、その両方が求められると思います」

最後に、これからデザイナーを目指す若い人たちへのアドバイスを聞きました。

「若いうちは何でも吸収しちゃってください!基礎をしっかり学びつつ、実践の場でも経験を積むことが大切です。そして、自分が好きで楽しいと思えることを見つけることが一番大事。でも、世の中のニーズとのバランスも忘れずにね」

さらに、嶋さんは継続的な学習の重要性も強調しました。「デザインの世界は本当に変化が速いんです。新しいツールや技術が次々と登場する。だから、常に学び続ける姿勢が大切。でも、それと同時に、デザインの本質、つまり人の心に届けるということは変わらないんです。その両方のバランスを取れる人が、きっと素晴らしいデザイナーになれると思います」

おわりに

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嶋さんの言葉には、長年デザインの世界で奮闘してきた経験と、この仕事への深い愛情が詰まっています。彼女の話を聞いていると、デザインという仕事が持つ奥深さと魅力が伝わってきます。

技術の進歩により、デザインの手法や道具は日々変化しています。しかし、人の心を動かし、メッセージを伝えるというデザインの本質は、これからも変わることはないでしょう。

嶋さんのような情熱を持ったベテランデザイナーたちが、次の世代に知識と経験を受け継いでいく。そして、新しい世代のデザイナーたちが、最新の技術と新鮮な感性を武器に、さらに素晴らしいデザインを生み出していく。そんな未来が、デザイン業界には広がっているのかもしれません。

デザインは、私たちの生活に密接に関わる創造的な営みです。それは単なる装飾ではなく、情報を伝え、感動を与え、時には社会を変える力を持っています。嶋さんのような情熱あるデザイナーたちによって、これからも私たちの生活はより豊かで、美しいものになっていくことでしょう。

文・師田賢人

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